序章 Difyの全体像
この章では、Dify(ディファイ)とは何か、どんな種類のアプリを作れるか、画面はどう構成されているかを説明します。実際の作り方は第1章以降で扱います。
本書の確認環境(対象バージョン)
- 本書の画面・機能は、クラウド版(cloud.dify.ai)と公式ドキュメント(docs.dify.ai)で確認しています(確認日:2026-08-14)。
- セルフホスト版(自前のサーバーに導入する版。コミュニティ版とも呼びます)では、画面や使える機能が本書の記載と異なる場合があります。
- 本書のチュートリアルは、AIモデルに Gemini 3.5 Flash-Lite を使って動作を確認しています(確認日:2026-09-02)。お使いの環境で選べるモデルは、管理者が登録した内容によって異なります。同じ名前のモデルが無いときは、モデルの一覧から選べるモデルに読みかえて進めてください。答えの文面はモデルによって変わりますが、操作の手順は同じです。
- Difyは更新が速く、画面の名称・配置・ボタンの文言がバージョンアップで変わることがあります。本書と画面が異なるときは、各章末の「出典一覧」にある公式ドキュメントで最新の情報を確認してください。
0-1. Difyとは
Dify(ディファイ) は、AIを使ったアプリケーションを作るためのプラットフォームです(オープンソースとして公開されています)。プログラムを書かずに(ノーコード)、画面の操作だけで、質問に答えるチャットボットや、決まった手順で処理するワークフローを作れます。
Difyの特徴は次の4点です。
- プログラムを書かずに作れる:ノード(処理の部品)を画面上に並べて線でつなぐだけで、アプリを組み立てられます。プログラマーがいない職場でも、業務の担当者自身が作成・修正できます。
- 処理の流れが図で見える:作ったアプリは処理の流れがそのまま図になって画面に表示されるため、後から見た人にも「何をしているか」が分かります。
- 複数のAIモデルを使える:OpenAI・Anthropicなど複数社のAIモデルを同じ画面から呼び出せます。どのモデルを使えるかは、お使いの環境の契約・設定によります。
- 作ったアプリを公開できる:完成したアプリは、ブラウザで使うWebアプリ、既存サイトへの埋め込み、外部のシステムから機能を呼び出す窓口(API)、AIアプリ・AIツール同士をつなぐ共通規格(MCP)で外部のAIツールから呼び出せるようにするMCPサーバーの4つの形で公開できます。公開の操作は第2章と第9章で説明します。
図序-1 Difyでアプリができるまで(部品を並べてつなぐ → 試す → 公開して使う)
図序-2 チャットボット・チャットフロー・ワークフロー・エージェント・テキストジェネレーターの違い
0-2. アプリの種類
Difyでは、作るアプリを5つの種類から選びます。本書の呼び方はDifyの画面表示(日本語)に合わせています。

| 種類 | どんなアプリか | 向いている用途の例 |
|---|---|---|
| チャットボット(Chatbot) | AIモデルへの指示文と資料の接続だけで作れる、最も簡単な対話アプリ | 庁内FAQへの自動応答、問い合わせ対応 |
| チャットフロー(Chatflow) | 会話の流れを自分で組み立てられる対話アプリ。前のやりとりを覚えたまま応答する | 聞き取りながら進める申請案内、段階的な相談受付 |
| ワークフロー(Workflow) | 決まった手順で処理する仕組み。人の操作なしの自動実行もできる | 文書要約、定期集計、審査の下処理 |
| エージェント(Agent) | 目的を伝えると、AIがツール(外部機能)の使い方を自分で判断して実行するアプリ | 複数の調べものを組み合わせる作業 |
| テキストジェネレーター(Text Generator) | 入力に対して文章を1回生成して返す、単発処理のアプリ | 翻訳、要約、文体の書き換え |
対話型のアプリ(チャットボット・チャットフロー)の例を挙げます。チャットフローで申請相談のアプリを作ると、「申請者名を教えてください」「事業の内容を教えてください」「予算の規模を教えてください」と順に聞き取り、最後に集めた内容から申請書の下書きを生成する、といった会話の流れを組めます。
ワークフローの動かし方
ワークフローは、人が実行ボタンを押す以外に、次の方法でも動かせます。
| 動かし方 | 内容 |
|---|---|
| 手動実行 | 編集画面のテスト実行や、公開したWebアプリから人が実行する |
| スケジュールトリガー | 毎日決まった時刻など、指定した時刻・間隔で自動実行する |
| Webhookトリガー | 外部システムからの通知(HTTPリクエスト)を受けて実行する |
| 統合トリガー(公式ドキュメントの表記は Integration Trigger) | 連携した外部サービスで起きた出来事を受けて実行する |
| API呼び出し | アプリをAPIとして公開し、外部システムから呼び出す(第9章・第11章) |
- トリガー(決まった時刻や外部からの合図でワークフローを自動で始めるしくみ)を使えるのは、アプリの種類がワークフローの場合だけです。スケジュールトリガーは1つのワークフローに1つまでです。
- トリガーはクラウド版の公式ドキュメントで確認した機能です。お使いの環境(セルフホスト版など)で使えるかは、環境・バージョンにより異なります。
種類選びの目安
| やりたい事 | あてはまる場合の種類 |
|---|---|
| 利用者と会話のやりとりをする | する → チャットボット。会話の流れを自分で設計したいならチャットフロー |
| 何かをきっかけにして、自動で動かしたい | 動かしたい → ワークフロー |
| 入力から文章を作る | よい → テキストジェネレーター |
| AIにツールの使い方まで任せたい | 任せたい → エージェント |
どの種類を選ぶかの画面操作は第2章で、作り方の3パターンは第1章で説明します。テンプレートから作る手順は第8章で説明します。
0-3. Difyの画面構成
Difyにログインすると、ワークスペース(チームの作業場所全体)の画面が開きます。本書で使う主な画面は次の2つです(名称は公式ドキュメントの日本語版で確認しています)。
| 画面 | 役割 |
|---|---|
| スタジオ | アプリを作成・編集・管理する。本書の作業の多くはここから始める |
| ナレッジ | ナレッジ(資料をためて検索できる保管庫)を登録・管理する |
このほか、環境によっては、用意されたアプリの例を見る「探索」、アプリから呼び出す外部機能を管理する「ツール」などのメニューが表示されます。メニューの名称・並び・数は、バージョンや環境により異なります。
- スタジオでアプリを開くと、そのアプリ専用の画面(編集画面・APIアクセス・実行履歴のログなど)に切り替わります。アプリ内の画面構成は第9章で説明します。
0-4. ノードとツール
Difyでアプリを組み立てるときの部品が ノード です。ノードから呼び出す外部機能が ツール です。

ノード は、ワークフローやチャットフローの編集画面(キャンバス)に置く、1つの処理の部品です。ノードを線でつなぐと処理の流れになります。公式ドキュメントのワークフロー作成手順には、たとえば次のノードが登場します。
- ユーザー入力:利用者からデータを受け取る
- LLM:文章を作るAIモデルを呼び出す
- IF/ELSE:条件によって流れを分ける
- イテレーション:一覧の各項目に同じ処理を繰り返す
- パラメータ抽出:入力から必要な項目を取り出す
- テキスト抽出・テンプレート・リスト処理:文章やデータを加工する
- 出力:処理結果を返す
このほか、ナレッジ(保管庫)から根拠になる断片を探す「知識検索」ノード(公式ドキュメントの表記は「知識検索」)を、ワークフローやチャットフローの中で使えます。
ノードの種類の全体像と各ノードの設定は、第10章で説明します。
ツール は、ノードやエージェントから呼び出す外部機能です(例:Web検索、外部サービスとの連携)。プラグイン(Difyに機能を追加する部品)を入れることで使えるツールが増えます。ツールとプラグインは第11章で説明します。
2つの違いは次のとおりです。
- ノードは、処理の流れを作る部品で、キャンバスに直接置く。
- ツールは、ノードやエージェントの中から呼び出す機能で、キャンバスに単独では置かない。
図序-5 ノードの主な種類(ユーザー入力・LLM・条件判定・出力など)と、キャンバスへの配置
0-5. 自治体での活用イメージ
| 業務の例 | 使うアプリの種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 庁内FAQへの自動応答 | チャットボット | 規程類をナレッジに登録し、職員の質問に答える |
| 議事録・報告書の要約 | テキストジェネレーター/ワークフロー | 文書を入力し、要点を生成する |
| 申請相談の聞き取りと下書き作成 | チャットフロー | 申請者名・事業内容などを順に聞き取り、下書き文面を作る |
| 定期的な集計・とりまとめ | ワークフロー | スケジュールトリガーで決まった時刻に自動実行する |
- メール送信や庁内システムとの連携には、外部サービスとの接続(第11章)が必要です。庁内ネットワークから外部に接続できるかは環境によるため、事前に情報担当部署に確認してください。
- 個人情報や外部に出せないデータを入れてよいかは、お使いの環境のルールに従ってください。
0-6. 本書の読み進め方
本書の構成は次のとおりです。
| 章 | 内容 |
|---|---|
| 序章(本章) | Difyの全体像 |
| 第1章 | アプリの作り方3パターン(最初から作成・テンプレート・DSLインポート) |
| 第2章 | 最初から作成の手順 |
| チュートリアル | 簡単なAIチャットアプリ作成(第2章の手順を実際に試す) |
| チュートリアル | やさしい日本語ワークフロー作成(ワークフローをゼロから組む) |
| 第3章 | 主要ノードと基本ワークフローの全体像 |
| 第4章 | 基本ノードの設定 |
| 第5章 | 知識検索の基本 |
| 第6章 | 条件分岐 |
| 第7章 | ノードの配置と接続(編集画面の基本操作) |
| 第8章 | テンプレートから作成の手順 |
| チュートリアル | テンプレートから作成(第8章の手順を実際に試す) |
| 第9章 | アプリの管理画面 |
| 第10章 | ノードの種類 |
| 第11章 | ツール・プラグイン・API連携 |
| 第12章 | AIにDSLを作らせてインポート |
| 第13章 | チュートリアル(3つの実例) |
| 第14章 | トラブルシューティング |
読み進め方の目安は次の3つです。
- すぐに作ってみたい方:第1章 → 第2章 → チュートリアル(簡単なAIチャットアプリ作成)→ チュートリアル(やさしい日本語ワークフロー作成)→ 第3章〜第7章で仕組みと編集画面の操作を理解 → 第8章 → チュートリアル(テンプレートから作成)と順に進む。
- 画面と部品を先に知りたい方:第7章・第9章・第10章を読んでから第2章で作る。
- 実例から入りたい方:第13章のチュートリアルをなぞってから、必要な章に戻る。
ナレッジ(保管庫)への資料の登録と検索の基本は、第5章で説明します。
用語集
本書の用語は、次の2分類で扱います。
- ①Dify画面の操作対象:Difyの画面に出る名前を主な呼び方にし、初出でだけ意味を括弧書きします。
- ②概念・現象:平易な言葉を主な呼び方にし、初出で専門用語を括弧書きします。
①Dify画面の操作対象(画面表示名が主)
| ①の語(画面表示) | 初出併記の形(意味=平易な補足) |
|---|---|
| スタジオ | スタジオ(アプリを作成・管理する画面) |
| 探索 | 探索(用意されたアプリの例を見る画面。メニューの有無・名称は環境により異なる) |
| ナレッジ | ナレッジ(資料をためて検索できる保管庫)/以降の補足は「(保管庫)」 |
| ツール | ツール(アプリから呼び出す外部機能。メニューとしての有無・名称は環境により異なる) |
| プラグイン | プラグイン(Difyに機能を追加する部品) |
| ワークフロー | ワークフロー(決まった手順で処理する仕組み) |
| チャットフロー | チャットフロー(会話の流れを自分で組み立てられる対話アプリ) |
| チャットボット | チャットボット(指示文と資料の接続だけで作れる、簡単な対話アプリ) |
| エージェント | エージェント(AIがツールの使い方を自分で判断して実行するアプリ) |
| テキストジェネレーター | テキストジェネレーター(入力から文章を1回生成する、単発処理のアプリ) |
| ノード | ノード(処理の流れを作る1つの部品) |
| キャンバス | キャンバス(ノードを並べて線でつなぐ編集画面の作業領域) |
| LLM(ノード名) | LLM(文章を作るAIモデルを呼び出すノード) |
| 知識検索(ノード名) | 知識検索(ナレッジから根拠になる断片を探すノード) |
| コンテキスト | コンテキスト(アプリにナレッジをつなぐ設定欄) |
| デバッグとプレビュー | デバッグとプレビュー(作ったアプリをその場で試す画面) |
| テスト実行 | テスト実行(ワークフローを試しに動かす機能) |
| トリガー | トリガー(決まった時刻や外部からの合図でワークフローを自動で始めるしくみ) |
| DSLファイル | DSLファイル(アプリの設計内容を書き出したファイル。取り込むと同じ構成のアプリを作れる) |
| ノード名(開始・LLM・知識検索・回答・出力・IF/ELSE・質問分類器ほか全20種) | 正式な一覧と意味は第10章10-1の表を正本とする |
| 変数 | 変数(ノードの間で値を受け渡すための入れ物) |
| システム変数 | システム変数(Difyが自動で用意する変数。名前が sys. で始まり、実行に関する情報が入っている) |
| 環境変数 | 環境変数(APIキーなどの秘密情報を、アプリ本体と分けて保存しておく変数) |
| 会話変数 | 会話変数(チャットフローだけで使える、会話の間ずっと値を覚えておく変数) |
| 変数インスペクタ(Variable Inspector) | 変数インスペクタ(実行後の変数の値を一覧で確認・編集できる欄) |
| トレーシング | トレーシング(どのノードがどの順に動いて何秒かかったかを確認できる、実行の記録) |
| オーケストレーション | オーケストレーション(アプリの中身を編集する画面) |
| APIアクセス | APIアクセス(作ったアプリを外部のシステムから呼び出す窓口として使うための画面) |
| ログ | ログ(アプリの利用記録を1件ずつ確認する画面) |
| モニタリング | モニタリング(アプリの利用状況の集計を確認する画面) |
| 注釈 | 注釈(ログの答えに、質問に対する改善済みの回答を登録しておく機能) |
| マーケットプレイス | マーケットプレイス(プラグインの公式配布サイト) |
| カスタムツール | カスタムツール(できあいのツールにない外部サービスを、そのサービスのAPI仕様書を取り込んでツールにする機能) |
| 統合(Integrations) | 統合(プラグインを含む外部接続の仕組み全体を指す、公式ドキュメントの呼び名) |
| DSLエクスポート | DSLエクスポート(作ったアプリをDSLファイルとして書き出す機能) |
| Secret型の環境変数 | Secret型の環境変数(パスワードなど、秘密の値として登録した設定) |
| エラー処理 | エラー処理(失敗時にどう続けるかをノードに決めておく設定) |
| デフォルト値 | デフォルト値(エラー処理で、あらかじめ決めた値を出力して流れを続ける設定) |
| 失敗分岐 | 失敗分岐(エラー処理で、失敗したときだけの別の流れに進む設定) |
②概念・現象(平易な言葉が主)
| ②の語 | 主にする平易な言い方(初出で専門用語を括弧に) |
|---|---|
| ノーコード | プログラムを書かずに作れること(ノーコード) |
| RAG | 登録した資料を根拠に探して答える仕組み(RAG/ラグ) |
| API | 外部のシステムから機能を呼び出す窓口(API) |
| MCP | AIアプリ・AIツール同士をつなぐ共通規格(MCP) |
| プロンプト | AIモデルへの指示文(プロンプト) |
| デバッグ | 不具合の原因を探して直すこと(デバッグ) |
| トークン | AIモデルが文章を処理する量の単位(トークン) |
| エンドポイント | APIの呼び出し先の住所にあたる文字列(エンドポイント) |
| ステータスコード | 処理結果を表す3桁の番号(ステータスコード。200番台は成功) |
| ブロッキング/ストリーミング | 結果を一括で返す方式(ブロッキング)/実行しながら途中経過を少しずつ返す方式(ストリーミング) |
| YAML | 設定や設計を書くための、人が読めるテキスト形式(YAML/ヤムル) |
本書で新しい用語が増えたときは、①②を判別してこの用語集に追記します。
出典一覧
本章の記述の根拠です(いずれも確認日:2026-08-14)。
| 内容 | 出典 |
|---|---|
| Difyの概要(AIアプリ構築のオープンソースプラットフォーム・エージェント・チャットボット) | https://docs.dify.ai/ja-jp/introduction |
| 公開の4形式(Webアプリ・API・サイト埋め込み・MCPサーバー) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/publish/README.md |
| MCPサーバーとしての公開 | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/publish/publish-mcp.md |
| チャットボット(モデルと指示文で作る最も簡単な対話アプリ) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/build/chatbot.md |
| チャットフロー(会話を覚えたまま応答する対話アプリ) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/publish/webapp/chatflow-webapp.md |
| チャットフロー(ワークフローに会話のやりとりを重ねた形。同じキャンバスでノードを組む) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/build/workflow-chatflow.md |
| テキストジェネレーター(単発のテキスト生成) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/build/text-generator.md |
| トリガーの種類(スケジュール・Webhook・統合)とワークフロー限定であること | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/nodes/trigger/overview.md |
| スケジュールトリガー(時刻指定・1ワークフローに1つまで) | https://docs.dify.ai/en/cloud/use-dify/nodes/trigger/schedule-trigger.md |
| ワークフローの作成手順・ノードの例・テスト実行 | https://docs.dify.ai/ja-jp/guides/application-orchestrate/creating-an-application |
| 画面名(スタジオ・ナレッジ・コンテキスト・デバッグとプレビュー・知識検索ノード) | https://docs.dify.ai/ja-jp/guides/knowledge-base/integrate-knowledge-within-application |
| DSLファイルの取り込み・書き出し(YAML形式) | https://docs.dify.ai/en/guides/management/app-management |
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